今回は、初の日本にある世界遺産を紹介。
ただし単独で世界遺産登録されているのではなく、
『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』の構成要素の一つとして登録されている。
この『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』、主に九州地方が多いのだが、それ以外にも静岡・岩手にも構成要素がある世界遺産。8県11市にもまたがり、全部で23もの構成資産で登録されています。
そのため、この世界遺産で登録されているところをまわるだけでも、けっこういろいろなところを転々と楽しめるだろう。
その中でも今回紹介するのは、製鉄・製鋼関連遺産として登録されている
山口県萩にある『萩反射炉』です。
こちら、何度か世界遺産の登録リストにはのったものの、近年の世界遺産登録がテーマに沿って複数の場所を登録することが主流になっていることもあり、登録範囲をどうするかで何度か紆余曲折があり、最終的に『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』として登録に至ったとのことである。
萩反射炉のフォルム。東南アジアの宗教遺跡的な雰囲気を感じませんか?
日本にもこういう遺跡があるんだなあと、しみじみ。
というわけで、今回のわきみちは、
萩に関する記事です。




反射炉?
反射炉というのは、金属を融解させる炉のことで、主に鉄の精錬に使われていた炉のこと。
鉄を用いた様々なものをつくっていくためには良質な鉄が必要であり、そのためには必要不可欠な設備なわけです。
1850年代明治の時期、英国と清国で起きたアヘン戦争や、黒船の来航など、内部からの脅威に対応するだけではなく、外からやってくる脅威に対しても対応を迫られていた時期になります。
特に九州や、中国地方の西の箸である長州のエリアに関しては、他国からやってくる船などが真っ先にやってくるエリアになりかねません。
そのため、このエリアでは外敵から藩を守るために旧来の大砲に代わり、西洋式の鉄製の大砲鋳造の必要に迫られていたらしい。
しかし、反射炉関連の技術では1851年に佐賀藩が反射炉を完成させており、他に先行している藩があった。それに続いて、薩摩藩・伊豆韮山・水戸藩とともに長州(萩藩)が続いて製造にあたったとのことである。藩としては技術的な遅れがあった中で、佐賀藩が製造していた反射炉などを見様見真似しながら、自分たちの藩の中でなんとか反射炉を用いた製鉄ができないかどうかを試行錯誤して作っていったものらしい。
その時に作られた反射炉がこの萩反射炉。
ただしこの反射炉、実際に大砲鋳造に使用された記録がなく、一般的な反射炉に比べると規模が小さいということもあり、試験用の炉として製造されたのではないかということが現在では有力になっているらしい。しかも、スケッチしたものを基に詳しい設計図もなしにつくられた反射炉のため、結局は一回も大砲を鋳造するまでにも至らず、鉄のようなものが少しできただけではないかと言われている。
技術面としての課題の他に、費用の面でも課題があったことから、これ以降も長州としては本運用の反射炉である実用炉は作られなかったとのことが、現在の見解らしい。
萩反射炉に行ってみる
では、さっそく世界遺産を訪れてみましょう。
萩城下町からは東の方に3kmほど進んだところにあります。少し中心地からは離れたところ。

『祝 世界遺産登録』の立て看が。結構控えめなので見落としてしまうかも。

詳しい案内があります。実際に作られたのは1856年。150年以上前。

世界遺産『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』の構成要素について詳しく書かれています。
主に九州地方に集まっている様子。すべて回るのはけっこう時間がかかりそうだなあ。
静岡の韮山にも反射炉があります。

階段を上がったところ。
反射炉後で残っているのは萩と韮山だけと書かれている。

階段をのぼっていくと反射炉の遺構が見えてきます。
反射炉そのものの遺構だけではなく、前面の広場でも建物・柵・囲や柱の遺構も見つかっており、これらの位置が土壇や、柱の位置は玉柘植で表されているとのことである。
なお、現存しているのは煙突部分のみらしい。下の炉の部分は埋もれているのか?それとも瓦解してしまったのか??

元々の構造を図解したもの。

近づいていってみましょう。
一見レンガ造りになっていますが、もともとは漆喰塗りで仕上げられていたらしい。

前面より。



中には入れないので柵の外から。

全景がこちら。
ちなみに、ブラタモリ『萩』の回でこちらは紹介されていました。
タモさんは内部まで入ることがでできていました。煙突内部などの様子を見てみたい場合は、こちらの回を見てみることをお勧めします。(まだ書籍化はされていませんが、萩のよさがよくわかる良回だったので、再放送とかしてくれればいいのですが。)
長州が欧米列強からの危機にさらされていたという点と、必要に迫られて軍備をしっかりと増強していかなければいけなかったという点。そういった幕末明治維新の時に力を発揮していった長州の試行錯誤を表す遺構として、貴重な建造物なのだということがよくわかるスポットでした。

大きな駐車場は完備されているので、非常に観光はしやすいところです。
萩の世界遺産
萩の町にはここ以外に、世界遺産『明治日本の産業革命遺産 製鉄・製鋼、造船、石炭産業』に登録されているろころがあり、近くには「恵美須ヶ鼻造船所跡」「松下村塾」、そして萩の中心部には「萩城下町」があります。あと一つの「大板山たたら製鉄遺跡」は少し離れたところにあり、中心部から20kmほど離れたところにあります。
萩城下町の記事はこちら。
