実際に体験しなければその過酷さやこの世のものとは思えないような状況は完全には理解しえないのが戦争。
しかし、そんな体験は二度とこの世にもたらせてはいけません。
そんなときに、その戦争のことを視覚からもたらしてくれるのが映画作品です。
戦争を題材にした映画作品は数多くあります。
戦争の悲惨さをスクリーン越しに伝えてくれる。
思わず目を背けてしまいそうになりますが、今を生きる我々にとって大切なのは、戦争という悲惨な体験を次の世代へとしっかりと受け継ぎ、二度と戦争の悲劇をもたらさない世の中を作っていくということでしょう。
今回紹介している映画も戦争を題材にした映画であり、その名を『野火』といいます。
太平洋戦争末期のフィリピンのレイテ島が舞台となります。
レイテ島というとその名前を聞くだけでもぞっとしますね。
レイテ島の戦いが起こった島であり、おびただしい数の人々が命を失った戦いなのでした。
そんなレイテ島を舞台にしたこの映画。
おそらく、戦争映画は数あれど、これほど生々しい表現をしている映画というのも珍しいのではないかと思います。
アメリカ軍だけではなくフィリピン人からも攻撃される日本軍。
飢えと孤独の中で生き延びようとする日本兵は、レイテ島でどのようになっていくのか。
今回はこの太平洋戦争をテーマにして制作された映画『野火』について紹介していきたいと思います。
というわけで、今回のわきみちは、
映画に関する記事です。

















映画『野火』

野火とは、太平洋戦争のさなか、フィリピンでの戦争の中で一人の軍人が極限状態の中で何とかして生き抜こうと、倫理的な問題も提示しながら表現した映画作品です。
かつて1959年にも映像化したことがあるそうなのですが、今回書いているのは2015年に映画化された野火についてです。
舞台は太平洋末期。
すでに日本の劣勢が明らかになった中で、各地で玉砕が続く戦線の中で、フィリピンのレイテ島が舞台となります。
フィリピンのレイテ島というと、レイテ島の戦いで日本軍が壊滅的な被害を受けた場所でもあります。
それだけでも、どれだけ悲惨なことがこの場所で起こるのかがなんとなく予想できますよね。
物語の主人公である軍人の田村は、そんなフィリピン戦線の中で結核を患ったことによって所属していた部隊を追われ、なおかつ野戦病院からも入院を拒否された結果、病と飢えに苦しみながらフィリピンの山野へとさまよい続けるところから始まります。
部隊に戻ることができずジャングルをさまよい続ける田村ですが、悪化する病状に加え、食糧が底をつき、状況は最悪なものとなります。
そんな最中、ジャングルの中で見つけた教会の中で、ただマッチが欲しかっただけであったものの、銃口を向けた田村を怯えたカップルの女を田村は撃ち殺します。
そして、その協会で塩が入った袋を見つけ、それを持ち出すことになります。
その後、別の兵士と出会うことになった田村は、彼らから舞台に対して撤退命令が出ており、レイテ島西岸のパロンポンへの集合が指示されていることを聞きます。
塩をもっていることでその兵士らとと共に行動することになった田村。
彼らはパロンポンへ向けて厳しい道のりを歩いていくことになります。
しかし、途中で大勢の兵士がやられている場所に行きつきます。
おそらくこの場所では敵が兵士たちを待ち構えています。
そうではあったとしても、この場所を進まなければパロンポンへは行きつくことはできません。
彼らは夜になったら行動を開始する作戦を立てます。
そして、周囲には同じように考えていた兵士たちが多数隠れていたのです。
夜になり行動を開始しますが、そんな浅はかな考えは的にも見抜かれていました。
敵からの一斉射撃によって一帯は地獄絵図となります。
田村はかろうじてこの攻撃から逃れ生き残ることができますが、周りには誰も生き残っている者はいません。

再び田村は、無数の死体が連なる道を歩き続けます。
そこで、以前野戦病院近くで出会ったことがあった兵士と落ち合います。
その兵士は、猿の干し肉だという謎の肉をもっていました。
田村にもその肉を食べさせます。
しかし、猿の肉だといっていた肉は、実は人間の肉なのでした。
そこで行われるのは生きるか死ぬかの争いと、極限状態の人間が食うか食われるかという、倫理的タブーな状況が繰り広げられる光景でした。
物語の最後、敵兵にとらえられ、現地の病院に収容されたことで一命をとりとめた田村。
戦後日本に戻った田村は、食事をする姿に狂気の様子を見ます。
そして田村が見つめる窓の外では、かつてジャングルの森や草地が燃えていたような野火が燃え上がっているのでした。

いかがだったでしょうか。
戦争というのは人間が人間ではなくなるような悲惨な状況を生み出します。
この映画ではそういった極限状態の中で、人間がどのようになっていくのかというのを生々しく表現した映画でした。
戦争は人を人ではなくしてしまう。
この映画が伝えたいものは、そういうメッセージを強く画面から伝えてくる内容でした。