1028【映画あれこれ】日本を代表する実業家、五代友厚を取り扱った映画『天外者(てんがらもん)』

映画あれこれ(Movie)
この記事は約5分で読めます。

今回紹介しているのは、とある一人の人物を取りあげた映画についてです。
以前このブログでも取り上げたことがある、幕末から明治にかけて、商都大阪で日本の近代経済の基礎を構築した人物、五代友厚です。
朝ドラの、あさが来た以降、ドラマでも数々登場するようになってくることが目立ってきた五代友厚。
この人物を中心として、オリジナルな物語を作り上げたのが映画『天外者(てんがらもの)』なのです。

この映画は別の方面で有名になりました。
それは、2020年に若くして亡くなった三浦春馬最後の主演映画であるからなのです。
そういった意味で各方面から注目されたこの映画。
史実が軸とはなっていますが、それだけにとどまらず、五代友厚の生き様を大胆に演じたこの映画。
一体どのような内容の映画なのでしょうか。

今回はこの五代友厚を取り扱った映画、天外者について紹介していきたいともいます。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • 近代日本経済の基礎を気付いた人物の一人、五代友厚の人生とはどのようなものだったのか。この映画でその足跡を追ってみよう。

映画に関する記事です。

1055【映画あれこれ】北方領土の実話をもとにしたアニメ映画『ジョバンニの島』
かつて色丹島に住んでいた島民の方の証言を基に、ソ連軍が色丹島へ侵略してきた前後の様子を映画化したものがあるのです。その映画とは、アニメ映画『ジョバンニの島』といいます。映画の中ではとある色丹島に住む兄弟を中心として話が進められていきます。このアニメ映画は銀河鉄道の夜をモチーフとしつつも、色丹島を舞台にした歴史的な史実を表現した映画なのです。
986【映画あれこれ】驚くほどのクオリティを誇る知られざる昭和天皇の姿『太陽』
この映画は全編を通して、一人の人間昭和天皇の終戦前後の苦悩、そして日常生活がリアルに展開されます。この映画で主演を演じたのは、イッセー尾形氏。その演技のリアルさが話題となり、海外ではかなり話題となった映画なのです。
965【映画あれこれ】あふれだすリアリティ…。これが現実とならないことを祈る…『エンド・オブ・ザ・ワールド』
今回紹介しているのはとある映画なのですが、核戦争によって世界が死滅していく状況を表した映画としては、かなり古い部類に入る映画です。元々は、1959年に映画が発表された『渚にて』という映画なのですが、それが2001年にリメイクされ『エンド・オブ・ザ・ワールド』として再度映画として公開されたものなのです。
923【映画あれこれ】ローマ法王にかかる重圧。そしてそこにある苦悩を描いた『ローマ法王の休日』
ローマ法王になるということはどういうことなのでしょうか。そんな世界中の人々が知っているけれど、実際にどうやってその立場になるのか。どんな生活をしているのか。そんなローマ法王の事実をコメディ映画として取り扱っているのが映画『ローマ法王の休日』です。
902【映画あれこれ】原爆投下からわずか8年。この出来事を風化させまいとした人々によって作られた映画『ひろしま』
原子爆弾を取り上げた作品の中でも、原爆の悲劇からわずか8年後という時代に、実際に広島での原子爆弾の様子を目の当たりにした多くの一般のエキストラの人々が参加した映画があります。その映画を『ひろしま』といいます。
881【映画あれこれ】インドネシアを震撼させた大虐殺事件を取りあげた映画『アクトオブキリング』
インドネシアは世界でも最大のイスラム教徒人口を誇る国です。それ以外の宗教の人たちには暮らしにくそう・・・。と思ってしまうかもしれませんが、インドネシア国内には、キリスト教の人も、ヒンドゥー教の人も、仏教の人もいます。そして、国の祝日にはそれらのイスラム教徒は違う宗教の特別な日も、国家の祝日として制定されるほどなのです。厳格なイスラム国家とは少し雰囲気が違いますよね。
860【映画あれこれ】インドのムンバイ同時多発テロを取り扱った映画『ホテルムンバイ』
た世界を震撼させた事件は、映画化され後世に語り継がれていく場合があるのです。今回紹介している映画もとあるテロ事件を紹介したものです。その映画とは、ホテルムンバイといい、2008年に起きたインドのムンバイ同時多発テロを取り扱った映画なのです。
839【映画あれこれ】実際の事件を取り上げたドキュメンタリー映画。まさか現代にこのようなことが…『奴隷の島、消えた人々』
今回紹介している映画は、『奴隷の島、消えた人々』。ドキッとしませんか、このタイトル。"奴隷"という言葉が印象的なこの映画のタイトル。いかに古い時代の話なのかなと思いきや、その詳細を見てみると、意外や意外。この映画は実際に2014年に発覚した韓国でのとある事件を取り扱った映画なのです。
818【映画あれこれ】もはや説明の必要のないほどの名作映画。映画と旅とがつながったのはここからかもしれない『ローマの休日』
今回紹介している映画は、日本では1954年に公開されたこの映画ですが、この映画を見て、映画の中で出てきた様々な舞台を巡りに行く!という行動に出た人々も多かったと聞きます。その映画の名前を『ローマの休日』といいます。
797【映画あれこれ】かの有名なこの人物を、一人の少女として新たな角度から映画化した『マリー・アントワネット』
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない。」このセリフを聞いたことがあるのではないでしょうか。誰のセリフだったかなあ、と思い返してみると、歴史上のとある悪女が浮かんでくる緒ではないかと思います。その人物こそが、フランス国王ルイ16世の王妃だったマリー・アントワネットです。
755【映画あれこれ】1950年代のサイゴンが舞台。10歳で奉公に出た少女の成長と人々との交流を描いた作品『青いパパイヤの香り』
今回紹介しているのは、ベトナムの大都市であるホーチミンシティがまだサイゴンと呼ばれていた1950年代のベトナムを取り扱った映画です。その映画の名前は、『青いパパイヤの香り』といいます。
734【映画あれこれ】ベトナムの古い慣習を映像化。しかし、その映像化は問題となり・・・『第三夫人と髪飾り』
ベトナムで作られた『第三夫人と髪飾り』という映画。この映画の舞台は19世紀のベトナム。一夫多妻制が残り、男児を生み育てることが女性の務めとされていた古き慣習の残る時代。その時代に翻弄される14歳の少女が主人公の映画です。
713【映画あれこれ】暗黒の時代を実際に体験した人物が演じるリアリティ『キリングフィールド』
今回紹介しているキリング・フィールドという映画は、地獄のような日々に突き進んでいっていた、当時のカンボジアの状況を表している映画なのです。その映像は非常にリアリティにあふれているのですが、そこまでのリアリティがなぜ表現できたのかというと、この映画の助演の男性が、実際にクメール・ルージュ下のカンボジアを生き抜いた人なのです。
573【映画あれこれ】同じ民族が引き裂かれた悲劇の戦争、朝鮮戦争。ある兄弟の姿を通して戦争の現実を物語る『ブラザーフッド』
映画『ブラザーフッド』は、朝鮮戦争に翻弄されたある兄弟を取り扱った映画なのですが、ストーリーとしてはフィクションであり、実際には起こりえないだろうという点もあったりするため、賛否分かれる映画です。ただ、戦争が同じ民族、家族、恋人たちを引き裂き、多くの人々の心の中に傷を残した戦争の雰囲気は十分に伝えてくれる作品だと思います。
555【映画あれこれ】ベトナム戦争時、アメリカはこの国の中でどのような立場だったのか『グッドモーニング、ベトナム』
ベトナム戦争真っただ中のサイゴン(現在のホーチミンシティ)でアメリカ兵のためにラジオ放送を行っていたある空軍兵且つラジオDJの視点から見たベトナムを描いた作品『グッドモーニング、ベトナム』です。このストーリーは実在の人物の体験に基づいて描かれており、ベトナム戦争のまた違った一面を見ることができる映画なのです。
537【映画あれこれ】ポル・ポト政権下のカンボジアでの実話。この国を襲った歴史の一端が見える『地雷を踏んだらサヨウナラ』
ポル・ポト率いるクメール・ルージュによって激しい内戦状態に陥っていた1970年代のカンボジア。そのような状況下にあったカンボジアに単身乗り込み、カンボジアの実情を伝え続けたのが一ノ瀬泰造氏なのです。そんな一ノ瀬泰造氏の半生を映画化したものが、今回紹介している、『地雷を踏んだらサヨウナラ』です。
522【映画あれこれ】今の時代ではありえないかもしれないが、人が自分の力で生きるためにはありだったのか『フリークス』
今回ふと目に留まったとある白黒映画。その映画なのですが、邦題では『怪物園』、原題では『フリークス』といい、サムネイル画像には下半身がなく、手だけで体を支える人物の画像が。あまりにも強烈なその画像が気になり、この映画を閲覧してみましたが・・・
507【映画あれこれ】イギリス統治時代のインドが舞台。この時代の女性のおかれた立場がよくわかる伝説的な女優『マドビ・ムカージ』
オンデマンドビデオサービスの中では、これまでに全く知らなかったような動画も目に入ります。たくさんのサムネイルを見ていると、その中には目に留まるものもあったりするのです。オンデマンドビデオサービスで目に留まったある映画作品と、そこから知ったとあるインド人女優であるマドビ・ムカージについて書いていきたいと思います。

映画『天外者(てんがらもん)』

天外者(てんがらもん)は2020年に公開された映画です。
大阪を中心に、渋沢栄一に並ぶ経済人であった五代友厚の生き様を描いた映画なのです。
天外者と書いて”てんがらもん”と不思議な読み方をしますが、この言葉は、薩摩地方の言葉ですごい才能の持ち主という意味を持っています。
なぜ薩摩地方の言葉なのかというと、五代友厚が薩摩藩士として生まれたからなのですね。
では、この五代友厚に焦点を当てた映画はどのような内容なのでしょうか。

五代友厚が活躍する時代は、江戸時代末期。
後の五代友厚である五代才助は、その才能が認められ長崎海軍伝習所で勉学に勤しむ青年でした。
同じく海軍伝習所を取り仕切っていた勝海舟によって目をかけられていた才助。
そんな才助の非凡な点は、土佐藩士の坂本龍馬の目にも留まっていたのでした。

才助の才は素晴らしい物であり、勉学だけではなく、一日でも早く船に乗船し自らの才能を発揮したいと考えていました。
そんな才助の才能はそれだけにとどまらず、様々な困難な物であっても、アイデアをもって解決してしまいます。
そんな才能をもつ才助はいつしか天外者(てんがらもん)と呼ばれるようになったのです。

そんな才助はひょんなことから出会った遊女のはるとしりあうようになり、はるのいる遊郭に足を運ぶようになります。
そこで才助はかの有名な岩崎弥太郎や、トーマス・グラバーなどとも交流をもつようになります。
そんな主要な人物たちと親交を深めていた才助は、島津藩主の斉彬の命によって蒸気船を上海で入手するという任務に就くことになります。
その後しゃんはにに向かった才助は無事に蒸気船を購入することになりました。

しかし、そんな折におきたのが、薩摩藩士によってイギリス人が殺傷された生麦事件です。
この生麦事件をきっかけにして薩摩はイギリスとの間で薩英戦争を起こしますが、イギリス軍の圧倒的戦力の前に才助は世界の広さとその強さを痛感させられます。
この戦争の際に捕虜となっていた才助。
なんとか解放されることにはなりますが、薩摩藩から追われる身となってしまいます。
そんな才助が頼ったのがかつて進行があったトーマス・グラバーでした。
その援助を得た才助はイギリスに視察に行くことになります。

イギリスでの視察は、才助に数々の知識を与えてくれました。
日本に戻ると、時代は大きく変革していきます。
長かった江戸幕府は終焉を迎え、明治新政府が発足していました。
才助は自らの名を五代友厚として、新政府の外交を担う役人として大阪に赴任していました。
そして、この大阪を東洋のマンチェスターとする目的のために奔走していくことになるのです。

ところが、日本は開国の際に諸外国と結んでいた不平等条約によってその景気は一向に良くなりません。
そんな状態の中で政府の一員としてできることには限度があります。
そこで友厚は、大阪を拠点として実業家となることを決意します。
その後の活躍は知っての通り。
大阪商工会議所の設立や、大阪取引所の設立など数々の事業に走り回ります。
しかし、49歳という若さで糖尿病によってこの世を去る友厚。
その艶の弔問客ははるか遠くまで続いていたのでした。
あらためて友厚が天外者(てんがらもん)だったことがその光景からもわかるかのようでした。

いかがだったでしょうか。
時代を作ってきた人物たちというものは、初めから結論ありきで生きていたわけではありません。
様々な紆余曲折があり、時代に名を残すような人物となっていったのです。
この五代友厚も、様々な人々との出会い、予期できなかった境遇などなど、数々の偶然が重なり合って、今に伝えられる五代友厚という人物になっているのです。