180【ネパール紀行】”死”も日々の生活の一部『パシュパティナート』

世界の世界遺産(World Heritage)
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ネパールではインドと同様に、主にヒンドゥー教が信仰されています。
そんなヒンドゥー教では、輪廻転生が信じられており、現生での行いや、葬られ方によって、また次の生へ生まれ変わっていくと言われています。
そのため、死も特別なことではなく、次の生への通過点なのであり、ネパールでは、生まれることも、生きていくことも、そして死んでいくことも、生活の中の一部として、あたりまえのように受け入れられている光景があるのです。

今回紹介するパシュパティナート寺院は、バグマティ川沿いにあるヒンドゥー教の火葬場を持っている場所なのです。
そこでは、亡くなったヒンドゥー教の人々が次々に荼毘に付され、一日中その煙が立ち込めています。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • 生まれてからいつかは死ぬ。人の一生は自然なもの。改めてそれを感じさせられる場所です。

カトマンズの記事です。

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パシュパティナート

パシュパティナートは、ネパールの首都カトマンズにあるヒンドゥー教寺院です。
1979年に世界遺産に登録された「カトマンズ盆地」の構成の一つです。
ここにある寺院はヒンドゥー教教徒のみが入ることができる場なのですが、このパシュパティナートが有名なのは、寺院の前を流れるバグマティ川沿いに、複数の火葬台(ガード)が並ぶ火葬場なのです。
このバグマティ川はガンジス川に流れる支流であり、ヒンドゥー教の人々にとっては、バグマティ川で体を清められ、パシュパティナートで荼毘に付され、遺灰をバグマティ川に流すということが、最も理想的な死であると考えられています。
そして、輪廻転生により、再び現生に戻ってくることを求めているのです。

そんなパシュパティナートは、インドのバラナシとは違い、入場料を払って中に入り、自由に撮影することが許されています
そして、火葬場を見れば、もちろん故人との別れを悲しむ人々の様子がそこにはあるのですが、着の身着のまま親戚一同が集まって、ワイワイガヤガヤと個人が荼毘に付されている様子を見ているのです。
死は悲しいものであるけれど、次の新たな人生に向けて旅立っていく華々しいものである、そういったように、人々の様子は見えました。

また、川の様子を見てみると、沐浴する人もいれば、洗濯をする人もおり、その中に火葬場があるのです。
その様子は、日本人からすれば体験したことのないような光景ですが、あまりにも生活の一部として見えてしますぐらい自然な光景なのです。

上の写真のように、パシュパティナートは一日中、故人が新たな人生に向けて、天へ旅立っていく煙が、あたり一面に立ち込めています。

アクセス

タメル地区からタクシーで約30分です。
公共交通機関は特にありません。

パシュパティナートに行ってみた

こちらが入り口です。
入場料は1000ルピー(≒円)です。

パシュパティナートの全景図です。
左側川岸に火葬台(ガート)や、パシュパティナート寺院があります。
右側は丘陵になっていて、ヒンドゥー教の小さな寺院が点々と建ち並んでいます。

小さく写っていますが、パシュパティナートでは、たくさんの猿が住んでいます。

入り口から道なりにしばらく歩いていくと。

川岸に立ち並ぶガートが見えてきました。
もちろんこの時も荼毘に付されていて、煙が立ち上っています。

ガートの後ろで親族などが集まっている様子です。

その横にあるガートでは、次の火葬のための準備が行われています。

上の写真の右側にある白い建物の中には、亡くなった方の遺体が置かれていて、死化粧や飾りつけなどが行われていました。

この橋の向こう側はバグマティ川上流になります。
身分の高い人のためのガートがあったり、荼毘に付す前の遺体がバグマティ川の水で清められていました。

ガートの様子です。
日本のように遺骨を残すのではなく、しっかりと遺灰にして、最後はバグマティ川に流します。

火葬をしている横で洗濯をしたり、川岸で休んだりと、火葬が生活の中の一部なような光景がありました。

対岸にある丘陵を登ると、多数のヒンドゥー教寺院が点々と建っています。

こちらにも猿が大量に生息していました。

ヒンドゥー教のストゥーパでしょうか。

丘陵からバグマティ川側を眺めた様子です。
あたり一面煙が立ち込めている様子がなんとなくわかるでしょうか。

いかがだったでしょうか。
世界の中でも火葬場の様子をこのように写真に収めることができる場というのは珍しいのではないかと思います。
しかし、日本に生まれ育った私たちとしては、亡くなった人々が荼毘に付されている様子を写真に収めるということには嫌悪感を抱く方もいます。
実際にパシュパティナートを訪れたときには、そのような同行者もいたことは確かです。
しかし、ネパールの人々にとっては、生まれてから死ぬまでそれらが全て特別なものではなく、生活の一部であるように感じさせられたことも確かです。
そのため、このパシュパティナートを訪れたときは、そこが特別な場所なのではなく、人々の生活の一部にある光景なのだということを、旅行者であっても感じさせられました。

世界のそれぞれの国々、地域には、そこで育まれてきた長い歴史があります。
それらの紡がれてきた歴史の中に身を委ね、その場でしか味わうことができない雰囲気を感じ取ることができることも、旅の醍醐味なのでしょうね。