207【ベトナム紀行】グエン朝の帝廟、中国とフランスの影響を受けた独特な折衷様式『カイディン帝廟』

世界の世界遺産(World Heritage)
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ベトナム中部のフエのエリアは、今から約200年前から約150年間この地に存在したグエン(阮)朝の都がおかれた地でした。
13代まで続いたグエン朝の王族ですが、その霊廟がいくつかこのフエの地には残されています。
今回紹介しているカイディン帝廟もそんなグエン朝の皇帝の陵墓の一つです。

このカイディン帝なのですが、当時ベトナムを植民地支配していたフランスの傀儡政権であったことと、国民に対して重税を課したということから、ベトナム国民には非常に人気のない皇帝だったのだそうです。

それは現在まで続いており、今もなおベトナム国民はこのカイディン帝廟には見向きもしないようなのですが、中国とフランスとが融合したような独特のスタイルを持つカイディン帝廟は、海外からの観光客には大人気のフエ観光のスポットなのです。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • 国内不人気は何のその。フエ観光時は、見どころたくさんのカイディン帝廟まで足をのばしてみよう。

フエ王宮について書いた記事です。

191【ベトナム紀行】ベトナム中部のグエン朝時代の世界遺産『フエの建造物群』
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2002年のフエ王宮について少し書いています。

091【ベトナム紀行】クッキングパパから始まった海外旅。"初めて"はこんなことに気を付けよう。
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フエで最も古く美しい寺院であるティエンムー寺院についての記事です。

228【ベトナム紀行】1601年建立のフエ最古の寺院であり、シンボルでもある『天母寺(ティエンムー寺院)』
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世界遺産ミーソン聖域の記事です。

258【ベトナム紀行】ベトナム戦争の戦禍を乗り越えた7~13世紀にかけての遺構群『ミーソン聖域』
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古都フエのカイディン帝廟

ベトナム中部にあるフエの町は1802年から1945年まで存在していたベトナム最後の王朝グエン朝、その都がおかれていた都市です。
このフエ一帯にある『フエの建造物群』は、1993年にベトナムで初めての世界遺産に登録されました。
この世界遺産の構成要素は以下です。

・フエ王宮と要塞、紫禁城、王立壕、博物館、国立フエ大学、ティンタム湖
・ティエンムー寺
・文学の寺と武術の寺神殿
・虎園闘技場(ロイヤルアリーナ)とヴォイレ寺院
・阮朝5代皇帝ドゥクドゥック(育徳帝)帝廟
・ナムジアオエスプラネード
・阮朝4代皇帝トゥドゥック(嗣徳帝)帝廟
・阮朝9代皇帝ドンカイン(同慶)帝廟
・ホンチェン寺院
・阮朝3代皇帝ティエウチ(紹治帝)帝廟
・阮朝12代皇帝カイディン(啓定帝)帝廟
・阮朝2代皇帝ミンマン(明命帝)帝廟
・阮朝初代皇帝ザーロン(嘉隆帝)帝廟
・鎮海城

この中で今回はカイディン帝廟について紹介していきたいと思います。

カイディン帝

カイディン帝(啓定帝)は、ベトナムに存在したグエン(阮)朝の第12代皇帝です。
1885年に生まれ、当時の統治国であったフランスを排除しようとしていた王族が一掃された後に、1916年にフランスの後押しもあって12代皇帝に擁立されました。

フランスの後押しによって王位に就いたことからも、フランスの監督下で多くの法令を制定することとなり、フランスに反抗する勢力となりえる知識層の影響力を弱める結果につながりました。
また、自分の霊廟言説のために多大な税を国民に課したりもしたのでした。
その後カイディン帝は結核のため1925年に40歳の若さで死去しています。

カイディン帝はこのような経緯から、フランスの傀儡政権であったと国民からは認識されており、植民地支配に苦しむベトナム国民からは不人気な皇帝でした。
それは現在までも続いており、カイディン帝の霊廟は海外からの観光客には人気のスポットではありますが、ベトナムに住む人々からは不人気な場所なのです。

カイディン帝廟

カイディン帝廟はフエの中心部にある王宮から南西約9kmの位置にあります。
グエン朝第12代皇帝・カイディン帝の墓所でであり、1920年にカイディン帝自らその建築に取り組み、死後6年が経った1931年に完成しています。
フランスの後押しによって即位したカイディン帝の霊廟らしく、中国とフランス両国の影響が随所にみられる、霊廟の中でも特徴的な場所です。
比較的近代に造られたということと、フランスから鉄筋コンクリートを持ち込んで造られているなど、フランスのバロック様式で建築されたため異彩を放っています。
また、その装飾にも特徴があって、日本も含めたアジア各地から集めた陶器や瓶なども使われています。

アクセス

鉄道フエ駅から南に5kmの位置にあります。
駅からタクシーかバイクタクシーで向かうと、カイディン帝廟前に駐車場が完備されています。

カイディン帝廟に行ってみた

それではカイディン帝廟へ行ってみましょう。

こちらがカイディン帝廟の入り口です。
すでにここから中国とフランスの融合したようなスタイル感を感じますね。
材質も鉄筋コンクリートを用いて製造されているのだそうです。

最初のゲートを超えると、次のゲートが見えてきます。
頂上のカイディン帝廟までは120段の階段を上っていきます。

欄干の装飾は中国系の様相ですね。

碑石(ステラハウス)

中間地点あたりにある碑石には、カイディン皇帝の功績が書かれています。
こちらにある龍の装飾の瞳にはフランスから持ってこられたワインの瓶が使われているのだそうです。

拝庭

更に階段を登ると拝庭に到着します。
まず目に入ってくるのが、ひときわ高さのある欧風な塔が見えてきますね。

その反対側には、中国風の石像が並べられています。

これらの像は等身大の大きさであり、グエン朝の文官や武官、そして兵士たちを模っています。

さらには、ゾウ、馬の石像も置かれています。

カイディン宮

入り口から120段上ると、いよいよカイディン宮に到着します。
内部は壁から天井まで一面に美しい装飾が施されており、実際にカイディン帝が安置されている墓所と、参拝者に向けた礼拝堂があります。

カイディン帝像が鎮座されている部屋です。
金箔が施され、黄金色に輝く等身大の像と部屋一面の装飾が印象的です。
この像の地下9mの位置にカイディン帝の遺体が安置されているのだそうです。
グエン朝の皇帝の遺体が安置されている場所が特定されているのはカイディン帝だけなのだそうです。

こちらは礼拝堂になります。
中央にカイディン帝の写真が置かれていました。
まだまだ近代の皇帝であるため、写真も残されているのですね。
天井の九龍、壁面もモザイク装飾で飾られています。

こちらはカイディン帝が執務に使っていた机らしきものです。
壁には当時の写真が残されていました。

そのほかにも時計や置物など、カイディン帝に縁のある品々が展示されています。

そして、カイディン宮で最も特徴的なのが、四季の様子が描かれたこのモザイク装飾です。
このモザイク装飾、中国から持ち込まれた陶器や、日本からきたビール瓶などが使われているのです。よく探してみると、「SAKURA」と書かれた瓶の破片がありました。

いかがだったでしょうか。
この霊廟を見ただけでも、カイディン帝がいかに型破りだったのかがわかります。
実際、宗教は信じず無宗教であり、新しい物がとにかく好きな皇帝だったために、このような様々な国の様式が融合した建物が生まれたのですね。
フエ観光に行くと、かなり広い範囲であるためにどうしても王宮だけになりがちですが、ぜひカイディン帝廟や、他の皇帝の廟も合わせてフエをもっと堪能してみてはいかがでしょうか。