ベトナムには数々の世界遺産がありますが、歴史の重みを感じられる遺跡としてはミーソン聖域がとてもお勧めです。
世界遺産登録自体は、フエ王宮の方が早かったのですが、歴史の古さからいうとこちらのミーソン聖域の方が、長い歴史があります。
そんな貴重な遺跡群なのですが、当時この地にあったチャンパ王国によって造られた遺構がとても貴重なものなのですが、それに加えてぜひここで見てもらいたい点があるのです。
それは、ベトナム戦争の惨禍にまきこまれた遺跡だということなのです。
ベトナム戦争時の爆撃によって、遺跡は多大な被害を受け、土台を残すのみでそれ以外は跡形もなくなっている遺跡もあります。
そして、遺跡の周りに大小多くのクレーターがあるのですが、これらもベトナム戦争時の爆撃によって投下された爆弾によってできたものだったりするのです。
どれだけ貴重な物であっても、戦争というものはおかまいなしに破壊していってしまうのです。
ベトナムの歴史を伝える遺跡群と、ベトナム戦争によって破壊された遺跡群。
ベトナムが辿ってきた1000年以上の歴史がこの地には凝縮されているのです。
というわけで、今回のわきみちは、
行ってみたら予想以上だった世界遺産を5つピックアップしてみました。

ホーチミンにあるベトナム戦争証跡博物館の記事です。

ベトナムの世界遺産についての記事です。




ミーソン聖域
ミーソン聖域は、ベトナムの中部から南部にあったチャンパ王国時代のヒンドゥー教シヴァ信仰の聖地です。
4世紀末に建てられたとされているリンガ寺院から、13世紀頃までに建てられたレンガ造りの遺跡等が多数残されています。
それおぞれの建造物は、漆喰などを使って仕上げられた形跡などがなく、当時の職人の高い技術力を伝えています。
このミーソン聖域は、ベトナム戦争のアメリカ空軍・B-52の爆撃によって大半の遺跡が破壊されています。
今もなお、破壊された展示物や建築物、爆弾によってできたクレーターが遺跡のすぐそばにあったりするところからも、戦闘の激しさがうかがえます。
またそれ以外にも、フランス統治時代に多数の盗掘被害にあっており、チャンパ時代の歴史を物語る数々の美術品が失われています。
そんなミーソン聖域は、1999年にユネスコの世界文化遺産に古都ホイアンと共に登録されました。
ミーソン聖域は1999年に世界遺産登録されてから20年以上経つこともあり、その遺跡地区はとても見やすく整備されています。
アクセス
ダナンから南に60kmほどのところにあります。
同じくダナン南東にあるホイアンとセットでまわることができる遺跡です。
ミーソン聖域へ行ってみた
それではミーソン聖域へ行ってみましょう。

かなりきちんと整備されているため、とても見やすい遺跡公園になっています。

こちらがミーソン聖域の遺跡の年代について説明が書かれていました。

園内を進んでいくと、バス乗り場に到着します。

園内はバス動画整備されているので、遺跡近くまで連れて行ってもらうことができます。

こちらが園内の案内図です。
年代やまとまりごとに、グループ分けされています。
遺跡グループK

順路に沿って遺跡内を歩いていくとまず最初にグループKの12世紀頃の遺跡が現れます。

途中に小さな土産物屋がありますが、これを越えてさらに進んでいきます。
遺跡グループF

さらに進んでいくと、トタンの屋根に覆われ、現在も修復中の9世紀の祠堂が現れます。
修復中の祠堂もそうなのですが、周辺を見渡してみても破壊された遺跡や、爆撃によってデコボコになった地面などが目立ちます。



遺跡グループE

グループFのすぐそばにある遺跡グループEでは、8世紀の宝物庫を見ることができます。
こちらは修復が終わったものであり、きれいな形を留めていますが、そこで使われているレンガなどはほとんどが元々使われていたものではないようです。



遺跡グループG

グループGは12世紀後半の祠堂であり、修復も進められているため、新しい階段なども設置されているため、内部までしっかりと見学をすることができます。


遺跡グループA

遺跡グループAは9世紀~10世紀の遺跡があり、ミーソン遺跡で最も高い主祠堂があったとされている場所ですが、ベトナム戦争の爆撃によってかなりの被害を受けた場所でもあります。
そのため、現在は土台が残るだけの部分がほとんどになってしまっています。



遺跡グループB・C・D

ミーソン聖域の中心を縦に走る川を渡ると遺跡グループB(9~11世紀)・C(8世紀・11~12世紀)・D(10・12世紀)があります。
遺跡グループAとは打って変わって、非常に保存状態の良いエリアです。
こちらには展示室の建物があり、その中には彫刻などが展示されていますが、それと合わせてベトナム戦争時の不発弾なども展示されています。







こちらはベトナム戦争時の爆撃によってできたクレーターです。

遺跡グループL
遺跡グループLは遺跡グループB・C・Dのさらに奥にあります。
ここは密林の奥にあることもあり、詳しいことが現段階ではよくわかっていない未開のエリアです。
(ツアー等ではこちらに寄ることはないそうです。)
遺跡グループH
遺跡グループHの遺跡は14世紀のものであり、壁面しか残っていないため、それ以外の部分を新しいレンガを用いて修復が進められています。
こちらは園内のバス乗り場に戻る途中で寄って見ることができます。

いかがだったでしょうか。
非常に大きな園内であるため、全て余裕をもって見て回るには2時間ほどを見ておいたほうが良いかと思います。
おそらくベトナム戦争前までには、今は土台しか残っていない遺跡も、その全てが残っていたのであろうということを考えると、いかに人類が築き上げてきた文化を、戦争が破壊してしまったのだと考えると、平和に向けた人々の取り組みがいかに大切かということを考えさせられる世界遺産でした。