312【カンボジア紀行】その規模はアンコール・ワット以上とも。密林の遺跡『ベンメリア』

世界の世界遺産(World Heritage)
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カンボジアのアンコール・ワット
世界遺産の中でも、常に人々が訪れたい場所の上位に位置する場所ですね。
そのため、遺跡は整備されていき、今では美しい寺院が人々の目の前に現れています。
しかし、このアンコール・ワットも、近代に入り発見されるまでは密林の中に埋もれていて、人々の記憶から消え去っていた時期もあるのです。
こんな巨大な遺跡が密林の中から見つかったとき、どのような様子だったのでしょうか。
また、熱帯の密林の中では、石で造られた遺跡はどのように荒廃させられるのか。
今ではアンコール・ワットからそれをうかがい知ることはできません。
ところが、そんな発見当時の密林に眠る遺跡の雰囲気が今も残る遺跡が、シェムリアップ郊外にはあるのです。

その遺跡の名はベンメリアといいます。
シェムリアップ中心部から50kmほど東に行ったところにある遺跡ですが、全貌が明らかになれば、アンコール・ワットをしのぐ規模があるのではないかといわれている遺跡です。
この遺跡を見るとすさまじい荒廃ぶりが目に入ります。
崩れ落ちた石の山が至る所にあり、修復には慎重を期され、現在もまだ発見当時のような状態で残されています。
密林の中で長い年月を眠っていた遺跡を発見したような感覚、これを感じてみませんか。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • 気分はまるで遺跡探検家!?遺跡を崩す、人の力を大きく超えた自然の力を感じてみよう。

カンボジアの遺跡に関する記事です。

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ベンメリア

ベンメリアとは、アンコールワットのあるシェムリアップ中心部から東へ約50km行ったところにあるヒンドゥー教寺院です。
世界遺産であるアンコール遺跡群の中のひとつです。
この寺院の特徴は、今もなお発見された当時であるかのように、修復が施されないままの遺跡が森の中にひっそりと眠っているのです。
逆に言うと、原形をとどめていないほど崩壊がひどい部分が多く、瓦礫の山と化して手が付けられないということもあるのかもしれません。
しかし、遺跡が発掘されたときにどのような形で発見されるのかなどが分かるという点では、貴重且つ希少な遺跡です。

アンコールワットからベンメリア、そしてさらに東に50km行ったところにある大プリア・カンと、これらの3つ寺院が一直線に並んでいます。
ベンメリアは、アンコール・ワット建造よりも前の11世紀末~12世紀初頭頃に、ベンメリアのすぐ北にあるクーレン山の石切り場から採取できる良質な砂岩を用いて建造されました。
その全貌は、アンコール・ワットをしのぐものではないかと推定されていますが、中心部の寺院そのものの規模はアンコール・ワットに比べると少し小さいものの、その構造においては類似点が多いため「東のアンコール」と呼ばれています。
深い密林の中に長く埋もれていたため、遺跡自体の崩壊がかかなり進んでおり、歩ける範囲はかぎられています。
特に回廊部分は崩壊がひどく、ほんの一部を除いて、内部に入って見学することはできず、遺跡の上を跨ぐように造られた木の歩道を通るようにされています。
ベンメリアは積極的に元々の寺院の形に修復しようとするのではなく、発見当時の姿を維持管理するように努められています。
そのため、他の遺跡では見られないような探検気分を味わうことができるのも、ベンメリア遺跡の醍醐味です。

アクセス

シェムリアップ中心部から東に50kmのところにあり、車をチャーターして1時間~1時間半で到着します。

ベンメリアへ行ってみた

それでは、ベンメリアに行ってみましょう。
今回はベンメリアの写真を多用しているため、じっくりとその様子を堪能していただきたいと思います。

ベンメリアでは有名な欄干のナーガです。
遺跡本体の荒廃に対して、ナーガが非常に美しく残っています。

遺跡内部は荒廃が激しく、真っすぐに歩けるところが限られているため、見学順路は決められています
駐車場から上の写真の道をまっすぐ歩くと、チケットチェックポイントがあり、その先に現在の遺跡入り口があります。

ベンメリア南にある現在の正門付近です。
ただし、ここから内部に入ることはできません。

さっそく、自然の力によって崩された遺跡が顔をあらわします。
人の手で造られたものであったとしても、うっそうと生い茂る熱帯雨林によってここまで崩されているのです。
自然の前にはこのように無力であることも痛感させられます。
ベンメリアは全体的にこのような状況になっているため、元々がどのような構造物だったのかがはっきりとわかっていない部分も多くあります。

現在見えているのが遺跡全体を取り囲む第三回廊部分になります。
回廊ですが、内部は崩壊しているため入ることはできません。
周囲から眺めるのみです。

回廊であろう部分を突き破るように熱帯の植物が顔を出しています。
このように遺跡が崩壊していくのです。

こちらはベンメリア内に2か所ある経蔵の一つです。

経蔵を超えると、光が差し込まない一画の廊下があり、内部に入ることができます。

こちらがその内部です。
窓が添乗付近にだけあるため、内部はほとんど光が差し込んでいません。
ここが何に使われていたかはわかっていないそうです。

遺跡内は、通路が高い位置に設置されているため、このように上空から広い範囲の様子をうかがうことができます。

ベンメリアも中央祠堂を囲むように第一回廊、第二回廊、そしてもっとも外側にある第三回廊となっています。
ここも回廊部分ですが、崩壊しているため内部に入ることはできません。

ここも回廊部ですが、天井部が崩れ落ちています。

ここなどは、天井部から崩れ落ちた石積みによって、完全に入り口がふさがってしまっています。

こちらも回廊部分でしょう。

2016年現在は上の写真のように見学用の通路が遺跡内部に設置されています。
ちなみに2006年時点ではこのような通路はありませんでした。
観光用に設置された設備ですが、そのことによってベンメリアの発見当時の雰囲気が崩されているわけではないので、この遺跡をうまく活用できている設備になっています。

個々はかなり崩壊の激しい部分です。
個々に何が建てられていたのか、今となっては想像することすら難しいです。

内部にまで大木や生い茂る枝々が入り込んできているため、少しでも整備を怠れば、再び密林に消えてしまうのでしょう。

ベンメリアではほとんど寺院の回廊などの内部に入ることはできないため、見学用通路なども遺跡の上部を通るように設置されています。
内部非常に気になるところではありますね。

崩れた石の中にはこのようにレリーフが残されているものもたくさんあります。
ヒンドゥー教寺院ですが、仏教の仏像などを模ったレリーフが多くみられるのも特徴です。

ここは廻廊があったと思われるところですが、天井のみならず外壁も全て崩れ落ちています。

こちらはもう一つの経蔵です。

経蔵は今見えているものよりも、もっと高さがあったのでしょうか。
上部から崩落したであろう感じがします。

こちらも回廊があったであろう箇所です。
完全に崩れ落ちています。

第三回廊外に出てきました。
外から眺めるベンメリアです。

至る所が上の写真のように崩落しています。
全て元々は第三回廊だったところです。

東門側にやってきました。
ここの欄干にはナーガがきれいに残っています。

東門をながめています。
こちらもかなり崩壊していて、東門から内部に入ることはできません。
このような状態でナーガだけがきれいに残っているのが一種の奇跡です。

こちらは地面に埋もれたナーガがありました。

こちらは東門にある、ベンメリアで最も美しく残っているナーガです。
5つの頭を持つナーガの細かな模様まで確認できました。

というわけで一周してきました。
ルートが制限はされていますが、かなり見学はしやすいように整備されつつあります。

しかし、遺跡周辺では今もなお地雷の撤去作業が行われています。
このあたりもドイツの協力により地雷撤去活動が行われているようでした。
ベンメリアは30年にも及ぶ内乱の間放置されていたため、まだ地雷除去の観点で危ないところもあります。
そのため指定されたコースから外れないように見学を行うことが安全上で大切です。

いかがだったでしょうか。
シェムリアップ中心部の遺跡群が年々修復され往時の姿を取り戻していっている中で、より観光しやすくなってきていることはうれしい限りですが、ベンメリアのように、自然の中で遺跡がどのように変貌していくのかを知ることができる遺跡というのもその存在価値が非常に高いのではないかと思います。
少し中心部から離れているため、なかなか旅のルートに入れることが難しいかもしれませんが、近年では比較的個人でも簡単にチャーターで行くこともできるため、せっかくのカンボジアなので郊外にまで足を延ばしてみてはいかがでしょうか。