430【カンボジア紀行】アンコールで唯一のギリシャ風2階建て建造物をもつ『 プリア・カン』

世界の世界遺産(World Heritage)
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アンコール遺跡の中でももっとも大きな場所を占めるアンコール・トム。
さらにその北には、規模はアンコール・ワットより少し小さくはなるのですが、アンコール遺跡群の中でも有名な遺跡の一つプリア・カンがあります。
このプリア・カンですが、アンコールにある寺院の造りである、中央の祠堂を回廊で囲んだ形になっています。
そして、ここが有名である一つの理由となっている建物が残っているのです。

それが、2階建ての建物であり、一見すると周辺の建物とは少し趣の異なった造りになっている珍しい建物なのです。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • もとは僧院だった寺院跡。僧院時代の雰囲気も残る迷路のような遺跡を見に行ってみよう。

カンボジアの世界遺産に関する記事です。

637【カンボジア紀行】アンコール・トム王宮近くライ王像で有名な『ライ王のテラス』
アンコール・トムというと、四つの面全てに顔が彫られている四面塔で有名なバイヨン寺院がありますが、敷地内には王宮をはじめ、仏塔やテラスなどの様々な遺跡が残されており、アンコール・トムだけでも見どころが非常に多い場所です。今回紹介しているライ王のテラスは、そのネーミングからアンコール・トム遺跡群の中でも印象強く残る場所です。
525【カンボジア紀行】巨大な人工池の中心に浮かぶ人工島。そこに浮かぶ寺院『ニャック・ポアン』
アンコール・トムの北には、東西バライに比べるとその大きさはかなわないものの、大きな人工貯水池(バライ)プリヤ・カーン・バライが残されています。そしてその貯水池の陸続きになった先に寺院が残されています。この寺院をニャック・ポアンといい、寺院内にも水がたたえられている構造となっています。
520【カンボジア紀行】広大なアンコール・トムの入り口。観音菩薩の四面塔が印象的な『アンコール・トムの南大門』
アンコール地区の観光では、まずは誰しもがアンコール・ワットにまずは向かうことになると思います。そして、そこから北にあるアンコール・トムに向かうと、バイヨンで見られるような四面塔をもつ巨大な南大門が私たちを迎えてくれます。今回はそんな南大門について紹介していきたいと思います。
508【カンボジア紀行】ジャヤヴァルマン5世により建設されたが、王が死去したこっとで未完成で放置されたヒンドゥー教寺院『タ・ケウ』
今回紹介するタ・ケウは、アンコール・トムのすぐ東にあるヒンドゥー教寺院です。ピラミッド式の寺院であり、高く積み重ねられた寺院であることが分かるのですが、アンコールのほかの遺跡とは大きく雰囲気が異なるところがあります。
499【カンボジア紀行】カンボジアを苦しめ続ける地雷の歴史。そして、それに立ち向かい続ける人物がその歴史を伝え続ける『アキ・ラー地雷博物館』
カンボジア全域で人々を苦しめ続けてきたのが、無数に地中に埋められた地雷ではないでしょうか。カンボジアの国の中にも、地雷を除去するために地道に活動を続ける人々がいるのです。今回紹介しているカンボジアはシェムリアップにある地雷博物館を創設したアキ・ラー氏もそんな中の一人なのです。
449【カンボジア紀行】かつて存在した貯水池東バライの中央にあった、かつては人工の島だった『東メボン』
アンコールの東側にも、巨大な貯水池 東バライがかつては存在していたのです。現在は枯れてしまっていますが、アンコール最盛期には東西のバライによって、農業生産が盛んにおこなわれていただろうことが想像できます。そして、人工の島 西メボン同様に、この東バライにも人工の島 東メボンがあったのです。
440【カンボジア紀行】夕日鑑賞のベストスポット。アンコール遺跡群の中でも唯一の丘の上に建つ遺跡『プノン・バケン』
アンコール遺跡の中でも珍しく、丘陵の上に建てられた寺院を紹介したいと思います。今回紹介しているプノン・バケン寺院ですが、アンコール・トムのすぐ南にある小高い丘陵の上に設けられた寺院です。
420【カンボジア紀行】王の沐浴場スラ・スランと対になった寺院跡『バンテアイ・クデイ』
元々は東バライの代替え施設として建造された貯水池スラ・スラン。そして、その対面には僧院があったのだそうです。しかし、その後その僧院はバンテアイ・クデイに。そしてスラ・スランは王のための沐浴場として整備されたのでした。今回はこのバンテアイ・クデイにフォーカスして紹介をしたいと思います。
368【カンボジア紀行】川に沿って作られたクメール遺跡。川底に遺跡が眠る異色の場所『クバール・スピアン』
今回紹介しているクバール・スピアンはそんな遺跡の一つであり、なんとこの遺跡、実は『川底にある』のです。数多くの遺跡を抱えるカンボジアですが、このように川底や川岸に沿って遺跡が連なる場所は、おそらくここだけではないでしょうか。
321【カンボジア紀行】塔四面に彫られた四面像が有名な『アンコール・トムのバイヨン』
アンコール・トムとは、アンコール・ワットの北に造られた、寺院と王宮を中心とした王都跡の遺跡です。その広大な遺跡の中心にあるのがバイヨンであり、この王都を造った王が考える宗教観と、治政観を体現している遺跡なのです。
282【カンボジア紀行】どんどん観光客に優しい観光地に。10年の変化を見る『アンコール・ワット今昔物語』
世界遺産の中でもトップクラスに有名なアンコール・ワット。ここを10年を隔てて見比べると、この遺跡がどんどんフレンドリーな遺跡になり、観光のしやすいスポットになってきていることが分かったのでした。
194【カンボジア紀行】タイとカンボジアの断崖絶壁の国境にある天空の世界遺産『プレアヴィヒア寺院』
カンボジアの世界遺産といえばアンコールワットですよね。2007年にシェムリアップとプノンペンの中間地点ぐらいにあるサンボー・プレイ・クック遺跡群が登録され、現在カンボジアには3つの世界遺産が登録されています。その残りの一つが、2008年に世界遺産登録されたプレアヴィヒア寺院です。
037 【カンボジア紀行】世界遺産タ・プローム 今昔物語
カンボジアのシェムリアップ。素晴らしい遺跡群があるこの地を、今と昔を見比べながら、その変遷をたどっていきたいと思います。

プリア・カン

プリア・カンは、1191年ジャヤヴァルマン7世によってたてられた仏教寺院です。
建てられた経緯としては、チャンパ族に打ち勝った記念として建てられたものであり、また亡くなった父親のための菩提寺でもある寺院です。
当時の寺院の運営には10万人以上もの人々が関わっていたと石碑には記されており、当時としては相当の賑わいを見せた寺院であった様子です。
現在は、プリア・カンの寺院周辺は密林となっていますが、当時はさまざまな職種の人たちが住む村が形成されており、仏教教義を学ぶ重要な場でもありました。

ところが王位がジャヤヴァルマン8世に移るとプリア・カンに大きな変革が行われます。
ヒンドゥー教徒であったジャヤヴァルマン8世はあろうことか、プリア・カンにあった仏像を全て破壊し、ヒンドゥー教寺院へと変えてしまいます。

プリア・カンの造りは、伽藍が三重の回廊によって囲まれており、東西の各入り口からは3つの塔門をくぐり中心部に到達すると、中央には祠堂があります。
東西の参道にはリンガを模した彫刻が連なっています。

そして、プリア・カンで最も有名なのが敷地内にある2階建ての建物です。
中央祠堂から見て北東にその建造物が建っています。
元々は図書館だったのではないかともいわれている建物であり、アンコールでも他には見られない2階建ての石で造られた建造物です。
その構造としては木造建築構造をそのまま石造りの建造物に当てはめたものであることも他に見られたに特徴なのだそうです。
その外観は、仏教でもヒンドゥー教でもなく、ギリシャの神殿のようになっているところも見所であり、なぜここだけがこのような造りとなっているのか、不思議な点でもあります。

アクセス

アンコール・ワットからアンコール・トムを突っ切ると、8kmほど北上すると到着する遺跡です。

プリア・カンへ行ってみた

それでは、プリア・カンへ行ってみましょう。

周囲を長方形の形をした堀で囲まれたプリア・カン。
堀の手前まで来ると、その中央にあるプリア・カンまでは長い一本道が続きます。
なお、敷地内には東西南北どこからでも入ることができそうでしたが、プリア・カンへの入り口は東西に設けられています。

こちらが堀を渡ったところにある塔門です。
周囲は壁で囲まれています。

この時は西側から入りました。
写真は西塔門です。
当時はかなり参道には石が散乱していた状態でしたが、現在は、修繕されて歩きやすい参道になっています。

さらに西塔門の先にある西門をくぐり内部に入っていくと、中央祠堂のすぐ手前には、リンガが立てられていたと思われる3つの穴が空いたリンガ台があります。

さらにその先にはリンガが残っていました。
プリア・カンは非常にたくさんのリンガが残されています。

別の出口に出てきました。

タ・プロームのように遺跡には木々が侵食してきています。

こちらもかなり大きな木が侵食してきており、その直下にある部分はかなり崩れ落ちていました。

かなり広い敷地内をさらに移動していくと。

こちらがプリア・カンで有名な二階建ての建物です。
全て石造りとなっています。

本当にここだけが趣が異なる構造をしています。
円形の柱などは、ギリシャでよく見られるような造りですね。

いかがだったでしょうか。
あまり写真では伝わらなかったかもしれませんが、このプリア・カンはかなり広い遺跡となっています。
それだけに、時間をかければ数々の彫刻や建造物など、様々な発見が予想できる遺跡です。
アンコール・ワットからは少し遠い場所にある遺跡ではありますが、日程に余裕があれば、こちらもぜひ訪れておきたい場所ですね。