人類の悪しき歴史、奴隷制度。
最も有名なのが、ヨーロッパ、アメリカ大陸、アフリカ大陸とを奴隷のやり取りが行われた三角貿易です。
大西洋を横断した奴隷貿易の記録によると、15世紀から19世紀の間に、約35000隻の奴隷船によって、約1200万人以上ものアフリカにすんでいた人々が奴隷として大西洋に連れ出されました。
しかし、大航海時代をにあっても船旅というのは非常に危険が伴うもの。
今の時代ほど船で大洋を横断するのは難しいことでした。
およそ500隻から1000隻もの奴隷船が目的地に到着することなく難破し、今も海の奥底に沈んでいるのです。
というわけで、今回のわきみちは、
難破した奴隷船の捜索

この記事で紹介されているのは、そんな難破した奴隷船のひとつサン・ホセ・パケテ・アフリカなのでした。
サン・ホセ・パケテ・アフリカは1794年、500人以上の奴隷を積んだ状態で、モザンビークからブラジルに輸送の最中、ケープタウンにて沈没し、そのうちの212人が溺死しました。
そして、そんな沈没した奴隷船であるサン・ホセ・パケテ・アフリカとの出会いによって、その後の生き方に影響を受けたある黒人のダイバーがいるのです。
そのダイバーの名はカマウ・サディキです。
2015年にこの難破船を見つけたダイビングチームの一員であったサディキは、海の底で眠る犠牲者たちの声を歴史に残していきたいと考えるようになります。

数多くの奴隷船が難破し、その多くが海の底に沈んではいるものの、何年にもわたったそのほとんどは見つけられておらず、その歴史がきちんと文書化して残されている状態ではありませんでした。
このことは、海に散っていった多くの捕虜たちが、歴史上に残されず、海の底に埋もれていること意味します。
そんな、アフリカの奴隷貿易の難破船を保護して、文書化し、後世に残す活動を行っているのが2003年に設立された非営利団体であるDiving With a Purpose(DWP)です。
この組織は、亡くなった奴隷にされたアフリカ人の忘れられた声を表面化させることが非常に重要であると信じています。
そこのリードダイビングインストラクターであるサディキもまた、この歴史を表面化し後世に伝えようとしている1人です。
しかし、DWPが設立された5年後に、メンバーの海事考古学者を失ったことにより、DWPは難破船の正確な場所についてまだわからない状態にいます。
DWPの課愛用考古学プログラムに参加するダイバーは、難破船や遺物を記録する方法、水中の調査および研究技術を学ぶため、少なくとも3日間は水中で過ごす1週間にもおよびトレーニングプログラムを受けなければいけません。
そういったダイバーたちを養成し、近年得られた成果が2019年にアメリア南部にあるアラバマ州のモビールにて、アフリカから米国に奴隷を運んだ最後の船として知られるクロティルダ号の発見を支援したことでした。
クロティルダ号は、1808年に奴隷貿易が廃止されてから、不法に西アフリカから約110人のアフリカ人を乗せ、1859年から1860年の間に密輸するために到着したと考えられています、
その後クロティルダ号は不法な大洋横断の証拠を隠すために焼かれます。
そんなクロティルダ号のの残骸が近隣の川の支流で発見されたのです。

冒頭のサン・ホセ・パケテ・アフリカの事例と、クロティルダ号の事例は、DWPの数少ない発見成功の事例です。
しかし、それ以外となると奴隷船の残骸を見つける活動は簡単ではありません。
何年もの時間がかかる可能性があり、その反面結果が保証されることはほとんどありません。
しかし彼らは、船で亡くなった人々の過去を掘り下げ、それらの物語を取り戻すことによって、歴史から学びを得られるようになると信じています。
実際、アメリカではアフリカ系アメリカ人の歴史は無視されて続けてきました。
学校では奴隷制について実際には何も教えていません。
しかし、自分のたち歴史を真正面から見ることができなければ、暗い歴史はまたそれを繰り返してしまうことは、歴史的に何度も証明されています。
だからこそ、歴史を見つめなおし、それを次世代を教えることは、これから先の歴史を好転させるために重要な物なのです。
DWPはその活動を継続するために若者たちを育成し、次世代につなげていっています。
まだ発見されていない何千隻もの船たちがいつか歴史の表舞台に現れるときに向けて。

いかがだったでしょうか。
歴史を学んだ時に必ず耳にする三角貿易ですが、その際に被害にい合った船のほとんどがまだ発見すらされていないというのは驚きでした。
しかし、人類が再び同じ過ちを起こさずに前に向かって歩んでいくためには、しっかりと過去と向き合うことが大切です。
そのためには、今回記事に出てきたような団体の取り組みが、人類全体の教訓として未来に活かしていくことができなければいけませんね。