525【カンボジア紀行】巨大な人工池の中心に浮かぶ人工島。そこに浮かぶ寺院『ニャック・ポアン』

カンボジア(Cambodia)
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アンコールにはかつて2つの大きな人工貯水池がありました。
それが東バライと西バライです。
現在は西バライは現存しているものの、東バライは干上がってしまいますが、空中写真からはかつてここに人工池があったことが分かります。
そして、それぞれの人工池の中央には人工島があり、それぞれ寺院が設けられていました。
アンコール地域の主要な産業は農耕であったため、こういった貯水池は重要であり、時の王朝にとっては水を制することによって人々の暮らしを守り、国を統治していたのでした。

こういった人工池は東バライと西バライだけではなく、他にも点在しています。
アンコール・トムの北にある寺院プリヤ・カーンのすぐ東側には、東西バライに比べるとその大きさはかなわないものの、大きな人工貯水池(バライ)プリヤ・カーン・バライが残されています。
そしてその貯水池の陸続きになった先にある中心部分に東メボンや西メボンのような寺院が残されています。
この寺院をニャック・ポアンといい、寺院内にも水がたたえられている構造となっています。
貯水池の中心にあることから、人々の治水に対する信仰の場であったニャック・ポアン。
これだけでもアンコールの地で、いかに水が大事であったのかが伝わってきます。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • かつては、周囲だけでなく寺院内にも水がはられた神秘的な姿を持っていたとされる寺院、ニャック・ポアンを見に行ってみよう。

カンボジアの世界遺産に関する記事です。

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ニャック・ポアン

ニャック・ポアンは、アンコール・トムの北にある貯水池プリヤ・カーン・バライの中央に浮かぶ円形型をした寺院です。
その創建は12世紀末のジャヤヴァルマン七世の時代に建てられたとされる仏教寺院です。
東バライ西バライの中央にも同じように東メボン西メボンがあるように、農耕が主要な産業であったアンコール地域にあって水を貯えることは統治者にとっては大切な要素でした。
貯水池に寺院を配置する意味としては、国の大切な治水を司る寺院であり、治水に関する人々の信仰対象であった寺院です。
また、医療目的としても設計されたとも考えられており、ここにある中央の池と周囲の4つの癒しの池の水が万病を治すとして人々から重宝されていました。

ニャック・ポアンという名前は絡み合うナーガ(ヘビ)という意味がある通り、寺院の中央には2匹のナーガが基壇に巻きついた円形の祠堂が建っています。
ニャック・ポアンの内部は、70m四方の池になるようになっており、その中心にこの円形の祠堂があります。
また中央池からはさらに東西南北にある4つの小池に対して水が流れ出しており、合計で5つの池が配置されたつくりになっています。

この寺院内の池ですが、時期によって水があるときとないときがあるようです。
今回紹介している写真では水は乾季であったこともあり、水がない状態です。
また現在は、寺院の周囲からしかニャック・ポアンは見ることができず、池や中央祠堂までは柵で区切られており、入ることができないようになっているそうです。

アクセス

アンコールワットから北東に向かって道沿いに10kmほどいったところにあります。

ニャック・ポアンへ行ってみた

それでは、ニャック・ポアンへ行ってみましょう。

アンコール・トムから道沿いに北東に向かいます。
貯水池プリヤ・カーン・バライに到着すると、中央にある寺院、ニャック・ポアンに向かって陸続きの道が設けられています。


最初に見えてくるのが北にある小池です。
この時は水は干上がっていました。

中央池から北の小池に水が流れ出す樋です。
北には象の頭部が彫刻されています。

中央池にやってきました。
干上がっているときは歩いて内部まで行くことができますが、現在はこの内部に入ることはできません。残念です。

中央にある円形の祠堂の基壇には2匹のナーガが絡みついた造りになっています。

また、祠堂の前には観音菩薩の化身とされる馬ヴァラーハの像が立っています。

こちらは、中央池から東の小池に水を送る樋です。
人の頭部の彫刻がありました。

こちらは、中央池から南の小池に水を送る樋です。
少しわかりにくいですが、ライオンの頭部の彫刻がありました。

最後にここは、中央池から西の小池に水を送る樋です。
馬の頭部の彫刻がありました。

いかがだったでしょうか。
残念ながらこのニャック・ポアン、現在は内部に入ることができません。
アンコールの遺跡の数々は、年々修復修繕されてきており、だんだんと観光地仕様となってきています。
そのため、観覧順路が決められたり、入場不可のエリアが設けられたりと、少しずつ窮屈になってきている部分もあります。
現在では間近で撮影することができない貴重な写真の数々を、この記事からだけでも楽しんでいただければと思います。