555【映画あれこれ】ベトナム戦争時、アメリカはこの国の中でどのような立場だったのか『グッドモーニング、ベトナム』

映画あれこれ(Movie)
この記事は約6分で読めます。

映画からは様々な歴史を学ぶことができます。
それこそ、映像やデータがまだまだ残っていない時代や場所、出来事など。
ある程度創作は入りますが、概ねそこで何が起きたのかを理解することができるという点で、映画というのは非常に役に立つコンテンツであるなと思います。
もちろん、フィクションもおり交えて作られるので、見る側の人間が真偽を見極めることができる力が必要にはなってきますが。
今回紹介している映画もそんな人類の歴史をとある観点から再現したお話なのです。

1955年から1975年までの20年間、インドシナ半島の東岸では長きにわたる戦争が起こっていました。
それこそが現在のベトナムを南北に分けて繰り広げられたベトナム戦争です。
もともとは、とうじのべとなむを植民地として統治していたフランス軍とベトナムとの戦いであり、ベトナム民族の独立戦争だったのです。
ところが、最終的にはアメリカがそこに参入し、アメリカ対ベトナムの戦争となり、あまりにも多くの犠牲者を出したのです。
そんなベトナム戦争真っただ中のサイゴン(現在のホーチミンシティ)で、アメリカ兵のためにラジオ放送を行っていたある空軍兵且つラジオDJの視点から見たベトナムを描いた作品が『グッドモーニング、ベトナム』です。
メディアによって戦争の様子が世界に報じられた初めての戦争といわれるベトナム戦争ですが、実際その時代にベトナム国内で生きていた人々の視点は知る手段がありません。
このストーリーは、実在の人物の体験に基づいて描かれており、ベトナム戦争のまた違った一面を見ることができる映画なのです。

というわけで、今回のわきみちは、

【今回のわきみち】
  • とあるDJの視点からベトナム戦争の内側を描いた傑作。当時のベトナムに生きた人々のリアルをこの映画から感じ取ってみよう。

映画に関する記事です。

944【映画あれこれ】イタリアの一都市を襲った恐怖の天災の中で生きた人々を描いた『ポンペイ』
今回紹介している映画は『ポンペイ(Pompeii)』といいます。もちろんそこの登場人物などは架空の人物なのですが、ポンペイで行われていたかつての人々の生活の様子や、ポンペイを襲った大災害の様子など、リアリティあふれる映像で見ている人に伝えてくれる映画となっているのです。
923【映画あれこれ】ローマ法王にかかる重圧。そしてそこにある苦悩を描いた『ローマ法王の休日』
ローマ法王になるということはどういうことなのでしょうか。そんな世界中の人々が知っているけれど、実際にどうやってその立場になるのか。どんな生活をしているのか。そんなローマ法王の事実をコメディ映画として取り扱っているのが映画『ローマ法王の休日』です。
902【映画あれこれ】原爆投下からわずか8年。この出来事を風化させまいとした人々によって作られた映画『ひろしま』
原子爆弾を取り上げた作品の中でも、原爆の悲劇からわずか8年後という時代に、実際に広島での原子爆弾の様子を目の当たりにした多くの一般のエキストラの人々が参加した映画があります。その映画を『ひろしま』といいます。
881【映画あれこれ】インドネシアを震撼させた大虐殺事件を取りあげた映画『アクトオブキリング』
インドネシアは世界でも最大のイスラム教徒人口を誇る国です。それ以外の宗教の人たちには暮らしにくそう・・・。と思ってしまうかもしれませんが、インドネシア国内には、キリスト教の人も、ヒンドゥー教の人も、仏教の人もいます。そして、国の祝日にはそれらのイスラム教徒は違う宗教の特別な日も、国家の祝日として制定されるほどなのです。厳格なイスラム国家とは少し雰囲気が違いますよね。
860【映画あれこれ】インドのムンバイ同時多発テロを取り扱った映画『ホテルムンバイ』
た世界を震撼させた事件は、映画化され後世に語り継がれていく場合があるのです。今回紹介している映画もとあるテロ事件を紹介したものです。その映画とは、ホテルムンバイといい、2008年に起きたインドのムンバイ同時多発テロを取り扱った映画なのです。
839【映画あれこれ】実際の事件を取り上げたドキュメンタリー映画。まさか現代にこのようなことが…『奴隷の島、消えた人々』
今回紹介している映画は、『奴隷の島、消えた人々』。ドキッとしませんか、このタイトル。"奴隷"という言葉が印象的なこの映画のタイトル。いかに古い時代の話なのかなと思いきや、その詳細を見てみると、意外や意外。この映画は実際に2014年に発覚した韓国でのとある事件を取り扱った映画なのです。
818【映画あれこれ】もはや説明の必要のないほどの名作映画。映画と旅とがつながったのはここからかもしれない『ローマの休日』
今回紹介している映画は、日本では1954年に公開されたこの映画ですが、この映画を見て、映画の中で出てきた様々な舞台を巡りに行く!という行動に出た人々も多かったと聞きます。その映画の名前を『ローマの休日』といいます。
797【映画あれこれ】かの有名なこの人物を、一人の少女として新たな角度から映画化した『マリー・アントワネット』
「パンがなければお菓子を食べればいいじゃない。」このセリフを聞いたことがあるのではないでしょうか。誰のセリフだったかなあ、と思い返してみると、歴史上のとある悪女が浮かんでくる緒ではないかと思います。その人物こそが、フランス国王ルイ16世の王妃だったマリー・アントワネットです。
755【映画あれこれ】1950年代のサイゴンが舞台。10歳で奉公に出た少女の成長と人々との交流を描いた作品『青いパパイヤの香り』
今回紹介しているのは、ベトナムの大都市であるホーチミンシティがまだサイゴンと呼ばれていた1950年代のベトナムを取り扱った映画です。その映画の名前は、『青いパパイヤの香り』といいます。
522【映画あれこれ】今の時代ではありえないかもしれないが、人が自分の力で生きるためにはありだったのか『フリークス』
今回ふと目に留まったとある白黒映画。その映画なのですが、邦題では『怪物園』、原題では『フリークス』といい、サムネイル画像には下半身がなく、手だけで体を支える人物の画像が。あまりにも強烈なその画像が気になり、この映画を閲覧してみましたが・・・
573【映画あれこれ】同じ民族が引き裂かれた悲劇の戦争、朝鮮戦争。ある兄弟の姿を通して戦争の現実を物語る『ブラザーフッド』
映画『ブラザーフッド』は、朝鮮戦争に翻弄されたある兄弟を取り扱った映画なのですが、ストーリーとしてはフィクションであり、実際には起こりえないだろうという点もあったりするため、賛否分かれる映画です。ただ、戦争が同じ民族、家族、恋人たちを引き裂き、多くの人々の心の中に傷を残した戦争の雰囲気は十分に伝えてくれる作品だと思います。
537【映画あれこれ】ポル・ポト政権下のカンボジアでの実話。この国を襲った歴史の一端が見える『地雷を踏んだらサヨウナラ』
ポル・ポト率いるクメール・ルージュによって激しい内戦状態に陥っていた1970年代のカンボジア。そのような状況下にあったカンボジアに単身乗り込み、カンボジアの実情を伝え続けたのが一ノ瀬泰造氏なのです。そんな一ノ瀬泰造氏の半生を映画化したものが、今回紹介している、『地雷を踏んだらサヨウナラ』です。
522【映画あれこれ】今の時代ではありえないかもしれないが、人が自分の力で生きるためにはありだったのか『フリークス』
今回ふと目に留まったとある白黒映画。その映画なのですが、邦題では『怪物園』、原題では『フリークス』といい、サムネイル画像には下半身がなく、手だけで体を支える人物の画像が。あまりにも強烈なその画像が気になり、この映画を閲覧してみましたが・・・
507【映画あれこれ】イギリス統治時代のインドが舞台。この時代の女性のおかれた立場がよくわかる伝説的な女優『マドビ・ムカージ』
オンデマンドビデオサービスの中では、これまでに全く知らなかったような動画も目に入ります。たくさんのサムネイルを見ていると、その中には目に留まるものもあったりするのです。オンデマンドビデオサービスで目に留まったある映画作品と、そこから知ったとあるインド人女優であるマドビ・ムカージについて書いていきたいと思います。

グッドモーニング、ベトナム

ベトナム戦争最中の1965年。
社会主義勢力であった北ベトナムに相対してた南ベトナムには、インドシナ半島の反共勢力支援のためにアメリカから多くの兵がサイゴン(現在のホーチミンシティ)へ送り込まれ続けていました。
その中に、現地のラジオ放送を通して現地の兵士の士気を高める目的として、ロビン・ウィリアムズが演じる人気DJであったエイドリアン・クロンナウアが送り込まれていました。
空軍上等兵であったエイドリアン・クロンナウアは、ベトナムに到着するや否や、戦地では考えられないようなハイテンションでラジオ放送を始め、多くの兵達から指示されるようになります。
しかし、軍規に反するような彼のラジオ放送に対して、軍の上層部は良い顔をしていません。

あるベトナム人との出会い

そんなクロンナウアですが、街で見かけたアオザイ姿のベトナム人少女トリンに一目ぼれします。
少女を追いかけていった先で口説こうとするクロンナウア。
それを制止する少女の兄ツアン
彼らは、お互いがお互いを理解できず、ステレオタイプで決めつけてしまいますが、2人でベトナム料理を食べたことから少しずつ和解していきます。
そんな折に、アメリカ兵向けのバーでツアンを馬鹿にされたことに対して腹を立てクロンナウアは、アメリカ兵たちと殴り合いの喧嘩になってしまい、クロンナウアは軍の上層部からより一層目を付けられることになります。

戦争の現実を知る

そんな折に、バーにいるクロンナウアをツアンは連れ出します。
その直後にバーがテロによって爆発。
多くの死傷者を目の前にし、そのニュースをDJとして放送しようとするクロンナウアでしたが、軍はそのニュースを隠蔽します。
自分たちの戦況があまり芳しくないことを兵たちに知らせるわけにはいかなかったのです。
そして、軍に反した行動をしようとしたクロンナウアはDJとしての仕事も停止されてしまいます。

そんなクロンナウアをツアンは自分たちの村に連れていき、そこで再びトリンに出会いますが、アメリカ人とベトナム人のあまりにも違う現実を前に、交際を断られてしまいます。

再びDJとして

ベトナムでのアメリカ兵たちの生活は、苦しく厳しいものでした。
クロンナウアのラジオ放送を求める兵士たちはクロンナウアの復帰を求めますが、真実を報じることを許されないベトナムの現実を前に復帰を断り続けます。
しかし、ある日とある渋滞に巻き込まれた移動中の兵士たちとの交流の中から、クロンナウアは兵達から自分の提供する笑いが求められていることを感じ、再びDJへと戻る決心をします。

戦場の兵達のためにSJとして笑いを送り届けたい、そういった一心から戦場へ向かうクロンナウアですが、乗っていたジープは南ベトナム解放戦線(ベトコン)によってしかけられた爆弾によって横転させられ立ち往生してしまいます。
そんなクロンナウアたちを助けてくれたのがツアンであり、ツアンの働きもあって、最終的にクロンナウア立ちはサイゴンに戻されます。

ツアン。その正体・・・

物語の要所要所で登場するツアン。
実はその正体は・・・。
バーの爆発事件も、南ベトナム解放戦線によって危険にさらされている地域に来れたことも、すべて合点がいくようになります。
友だと信じていたツアン。
そして再びツアンと出会うことになりますが、アメリカが善意で行っていた南ベトナムへの支援が、結局は偽善であり、善意を押し付けただけだったということにクロンナウアは気づきます。

『グッドモーニング、ベトナム』が伝えたかったこと

物語の主軸にはクロンナウアとツアンとの信頼関係があります。
自分たちは正しい、南ベトナムを助けるために来たのだ、そういった正義感からやってきたと思い続けていたクロンナウア。
しかし、実際のベトナムでは、アメリカがやってきたことによってベトナム人が大切な人を失ったり、金銭に任せてベトナムで好き放題するアメリカ人、そういった現実を目の当たりにします。
正義とは何なのか、見終わった後に、世界の警察を自負し、アメリカの理想を世界に押し付けてきたアメリカに対する、真実の姿が浮き彫りになったような気がしました。

この物語は全編を通して、いわゆる戦争映画のような残酷なシーンが描かれているわけではありません。
しかし、アメリカ人たちが遠くベトナムという場所で生きてきたふるまい、自分たちの国を我が物顔で往来するアメリカ人たちに対するベトコン達の憎しみ、信頼し合えていると思っていたのに乗り越えられない民族の壁がある現実。
こういったことが、ジワジワと実際の戦地のリアリティを感じさせてくれる映画なのです。

いかがだったでしょうか。
20世紀、世界のいたるところの戦いに介入していったアメリカ。
彼らは彼らの理想を掲げて、世界の様々な場所へ行きますが、それはあくまで彼らの理想であって、送り込まれた先では、必ずしもそうではないのです。
その現実があったからこそ、20世紀のどの戦いでもアメリカは勝利を収めることができなかったのではないでしょうか。
そして、将来また同じことが繰り返されるかもしれません。
そういった未来の出来事に対して警鐘を鳴らす意味でも、非常に価値のある映画ではないかと思いました。