どこの国にも伝統的な文化があります。
それは言葉だったり、生活様式だったり、様々な物がありますよね。
そんな文化の一つのには、演芸・芝居・舞台といったものもあります。
日本でも歌舞伎や能、狂言。
人形浄瑠璃や、近代であれば歌劇などなど、伝統的な文化が根付いているわけです。
今回もインドネシアの文化についての紹介なのですが、インドネシアにも舞踊や芝居といった文化がたくさんあります。
その中でも、インドネシアに古くから伝えられている人形を用いた芝居を紹介したいと思います。
それは、ワヤン・クリ(Wayang Kulit)というのですが、人形を用いたお芝居ではあるのですが、ただ単なる人形劇ではないのです。
このワヤン・クリ、人形を操って行われるお芝居ですが、その人形を使った影絵芝居なのです。
白いスクリーンの裏で操り手がワヤン・クリを操り、裏からランプを当ててスクリーン上に影を作り出し、芝居を演じます。
子どもたちの遊びの文化としての影絵は知っていましたが、一国の伝統文化として影絵芝居があるということには驚きです。
では、このインドネシア伝統のワヤン・クリとは、どういった歴史をもった影絵芝居なのでしょうか。
というわけで、今回のわきみちは、
インドネシアの文化に関する記事です。


ワヤン
ワヤン・クリ(Wayang Kulit)(=ワヤンとも呼ぶ)とは、インドネシアのジャワ島やバリ島などで主に行われ、伝統的に伝わり続けてきた人形を使った影絵芝居です。
このワヤン・クリが特徴的なことは、ただ単なる人形芝居なのではなく、白いスクリーンに後ろからランプを当て、間にワヤン・クリの人形を置いて、その映し出された影で芝居を表現します。
この伝統的な影絵芝居は、10世紀ごろには上演されていたという記録が残されています。
そのため、2009年にユネスコの世界無形文化遺産にも登録されています。
では、ワヤン・クリとはどういったものなのかというと、まずはその名前から見ていきましょう。
ワヤンとは影を表し、クリは皮を意味しています。
影はわかるのですが、皮とはどういうものなのか、となるのですが、ワヤン・クリで用いられている人形は牛の皮でできているため、ワヤン・クリと呼ばれています。
人などの形に造られた人形の部分部分に細かな穴が無数に開けられており、これによって影になった時にただ単に真っ黒になるのではなく、体の輪郭が表現されるようになっており、影絵ではありながら体の細部の動きまでもがわかるようになっています。
この皮で作られた人形の中心に芯棒、手の部分にそれぞれ棒がついており、これらをダランと呼ばれる人形遣いが一人で操って動きを表現することができるのです。
一人でいくつもの人形を演じたりするため、人形についている芯棒を座台に突き刺して、複数の人形を同時に舞台に出演させるような演出をすることができるのです。
また、影ではあるものの、ワヤン・クリで用いられる人形には彩色が施されています。
観客からは影しか見えないので、彩色すること時代意味があるのか?と考えてしまいますが、これにも意味があるのだそうです。
それは、ダランのいるスクリーンの裏側があの世であり、その様子を現世である私たちから見ると白黒の様子にしか見えない、という意味があるのだそうです。
ワヤン・クリの舞台では、演者だけでなく、音楽の演奏者が舞台のお話に合わせて音楽を演奏します。
鉄琴のようなインドネシア伝統の楽器であるガムランを演じて、影絵芝居に華やかさが添えられるのです。
このようなワヤン・クリの人形は、今でも伝統的な工房で作られており、ジャワ島ではジョグジャカルタ周辺、バリ島などで伝統的な工法そのままに作られ続けています。
今回は、ジョグジャカルタでたまたま訪れたワヤン・クリの工房、PUTRO WAYANGの様子を写真つきで紹介したいと思います。
アクセス
ジョグジャカルタの王宮から南に600mほどのところにあります。
PUTRO WAYANGに行ってみた
それでは、PUTRO WAYANGへ行ってみましょう。

インドネシアではだんだん減ってきている自転車タクシーのベチャですが、インドネシア随一の観光地であるジョグジャカルタでは、市内の移動ではまだまだ使う場面が多いようです。
観光客と見かけるとすかさずセールスを仕掛けてくるので、きちんと値段交渉をしてから利用しましょう。
また、安い値段で持ち掛けてくるベチャもあるのですが、この場合、頼んでもいない土産屋にかなり寄り道をされます。
この時も、安い値段での利用だったので、頼んでもいない土産物屋にたくさん寄り道されました。
その時に寄った店の一つが今回紹介しているPUTRO WAYANGです。

ベチャでのんびりとジョグジャカルタ市内散策をしていると、インドネシアの伝統文化であるワヤン・クリの人形を、伝統的な方法で製作しているワヤン・クリ工房がいくつもあります。
この時は、PUTRO WAYANGというお店に連れていかれました。

工房の中ではたくさんのワヤン・クリの人形が展示・販売されています。

大きさとしては人形部分だけで30cm、棒まで含めると50cmほどあります。
サイズもこれ以外にもいろいろあります。

値段もピンキリで、安いものであれば数百円、高いもので5000円くらいのものまであります。
見ての通り、人形は金色と鮮やかな色を用いて彩色された人形であり、お土産品としてもぴったりです。

同じくインドネシアの伝統工芸であるバティック(ろうけつ染め)の展示もありました。


工房内にはワヤン・クリだけではなく、それ以外の人形類も展示販売されていました。


それでは工房へといってみましょう。
ワヤン・クリ工房

ワヤン・クリで使われる人形の素材は、牛の皮を使います。
そのため、出来上がった人形は非常に頑丈です。

工房とは言ったものの、非常にオープン。
通りを歩きながらもその製作の様子を見ることができます。


ワヤン・クリの人形には、無数に穴があけられ、その穴によって影絵ではあるものの、人形の単調な影だけではなく、細かな輪郭までもが陰であっても表現されるようになるのです。

非常に細かな作業ですが、非常にスピーディーに行われています。

手元をよく見てみましょう。
インドネシア伝統の衣装を再現するため、細かく細かく穴があけられています。
これを陰で見たらどうなるのでしょうか??

と思っていたら、太陽の光を背にどのように見えるのか見せてくれました。

いかがでしょうか?
無数の穴が光を通し、体の細部や衣装の様子まで表現されていますよね。
素晴らしい技術です。
いかがだったでしょうか。
実際、このジョグジャカルタ訪問の際には、ワヤン・クリの影絵芝居も見に行ったのですが、お芝居の方は・・・、なかなかゆ~~~~~ったりとした舞台で、内容を理解するのが結構難しかったので、事前にどんな演目で、どんな内容なのかを調べていった方が何倍も楽しめると思います。
なにはともあれ、インドネシアのお土産としてもぴったりな工芸品だと思うので、インドネシアを訪れたときには1つはお土産として買ってみてはいかがでしょうか。