かつて世界に存在した多民族国家。
ヨーロッパの南東、南スラヴの5つの民族を1つのした国家ユーゴスラビアです。
現在では、セルビア・クロアチア・スロベニア・ボスニアヘルツェゴビナ・モンテネグロ・北マケドニアと別れてしまっています。
かつては、七つの国境、六つの共和国、五つの民族、四つの言語、三つの宗教、二つの文字、そして一つの国家として、多様性を内包する国家として20世紀に存在していました。
今回は、そんなユーゴスラビア的な地域が日本にも存在する、というお話です。
現在の日本は47都道府県が存在しているわけですが、7世紀の律令時代から5つの律令国として存在し、今現在は一つの県として存在している都道府県があるのです。
その名を、ヒョーゴスラビアといい、兵庫県のことなのです。
北海道に次いでかつての律令国で見ると多くの地域が1つの都道府県になっている兵庫。
そのためか、兵庫県が今の形になって150年余りが経つにも関わらず、いまだにそれぞれの地域の主張が強い県となってしまっているのです。
そのような状態をユーゴスラビアになぞらえて、ヒョーゴスラビアというのですね。
今回は、そんな兵庫県の実態、ヒョーゴスラビアについて調べていきたいと思います。
というわけで、今回のわきみちは、
ヒョーゴスラビア

西日最大の貿易港である神戸を有する都道府県の一つ、兵庫県。
大都市大阪近郊にあることもあって、都心部で働く多くの人々の住む県であるイメージが強い兵庫県ではありますが、近畿地方の府県の中でも最大の面積を持つ兵庫県は、南は瀬戸内海に面しているところから、北は日本海に面しているところまで。
多くの人口を抱える地域もあれば、過疎化の地域もある。
日本でも有数の工業地域もあれば、農業や林業が主要な地域。
水産業が有名な地域もある。
夏の暑さが厳しい地域もあれば、冬には豪雪地帯となって冬の厳しさを感じられる地域まで、一つの県の中に、あらゆる条件の地域が存在していることから、日本全体の縮図が兵庫県であるといわれるほどの県なのです。
そんな兵庫県が存在している地域には、かつて7世紀の頃から律令国として、5つの国が存在していました。
その5つの国とは、摂津・播磨・但馬・丹波・淡路の5つなのです。
この5つの旧国が1つとなった兵庫県。
もうすでに150年余りが経とうかというにもかかわらず、まだまだそれぞれの地域によって県民性が異なるといわれているのです。
そのため、兵庫県がヒョーゴスラビアと呼ばれるようになっているゆえんなのです。
この言葉の元になったのは、かつてヨーロッパに存在した国、ユーゴスラビアからきています。
七つの国境(イタリア・ハンガリー・アルバニア・ギリシャ・ブルガリア・オーストリア・ルーマニア)
六つの共和国(セルビア・モンテネグロ・ボスニアヘルツェゴビナ・スロベニア・クロアチア・北マケドニア)
五つの民族(スロベニア・クロアチア・セルビア・マケドニア・モンテネグロ)
四つの言語(スロベニア・クロアチア・セルビア・マケドニア)
三つの宗教(キリスト教(カトリック・正教会)・イスラム教)
二つの文字(ラテン・キリル)
一つの国家(ユーゴスラビア)
これを合言葉として成立していた多民族国家ユーゴスラビアですが、20世紀末に民族ごとにその分裂が始まり、現在では別れてしまっています。
しかし、ヒョーゴスラビアはまだまだ健在。
7つの県境(※大阪・京都・岡山・香川・徳島・鳥取・和歌山(海側から見ると入るのかな・・・!?)
6つの方言(摂津・播州・但馬・丹波・淡路・神戸)
5つの旧国(律令国)(摂津・播磨・但馬・丹波・淡路)
4つの新幹線駅(新神戸・西明石・姫路・相生)
3つの空港(伊丹・神戸・コウノトリ但馬)
2つの海(瀬戸内海・日本海)
一つの県(兵庫県)
(※これは一例ですが、いろいろなバージョンがあるそうです。)
このようにかつて5つの別の国だった地域が一つになった経緯から、他の県に比べても、兵庫県としての一つの県に対する帰属意識が小さいのではないかといわれており、兵庫県出身の人にどこ出身化を聞くと、『神戸』などのように、地域で答える人が多い所以となっています。
では、このヒョーゴスラビアの構成国それぞれの特徴について書いていきたいと思います。
ヒョーゴスラビアの構成国

摂津
現在の兵庫県の県庁所在地である神戸を抱える摂津は、兵庫県の中でも最も栄えている地域であり、おしゃれな港のイメージや、芦屋の高級なイメージなどがついているため、神戸出身の人であればかならず、出身は神戸と答えるほどなのです。
神戸の港や芦屋以外にも、高校球児たちの聖地である甲子園球場や、長い歴史のある温泉地である有馬温泉、今もなお人々のあこがれであり続けている宝塚大劇場など、兵庫県を代表する場所や建物などもこの摂津の地域に存在しています。


播磨
5つの地域の中でも最も大きな面積を有するのが播磨です。
東側は神戸などと近いため、摂津地域との結びつきが強くなっていますが、西側になると岡山県と隣接しているため、東西で雰囲気が異なってくる傾向があるのだそうです。
そんな播磨の中で最も大きな都市が、世界遺産の姫路城を有する姫路です。
この姫路を中心に、明石海峡大橋を抱える明石、赤穂浪士のお話で有名な赤穂などを抱えていることも特徴です。
また、そうめんの代表的ブランド揖保乃糸、塩の代表的ブランド赤穂の塩など、食べ物関係でも全国的に有名なものが存在しています。
兵庫県に編入されたのが遅かった播磨ではありますが、日本を代表す歴史や伝統、地場産業を有する地域として、現在の兵庫県を強く支える地域なのです。




但馬
兵庫県の北部に位置し、鳥取や京都などとのつながりが深いのが但馬の地域です。
瀬戸内海側の摂津や播磨とは一転して、日本海に面する冬は豪雪地帯。
豊岡の街を中心として栄える但馬地域は、人口としては多くはありませんが、観光として訪れる地域としてのイメージが大きいかもしれません。
外湯巡りで有名な城崎温泉から、出石城の城下町、天空の城で有名な竹田城跡などを有しています。
また、冬になれば日本海で採れるカニが有名ですし、出石そばも有名ですね。
また、高級牛肉である神戸牛も、元をたどれば但馬産の但馬牛に行きつきます。
このように、兵庫県の中でも独特の気候風土をもった地域がこの但馬なのです。
5つの国の中でも、大阪からは最も離れているため、少し大阪とお隣さんという感覚は薄いようです。






丹波
摂津の北にあるのが丹波であり、現在は丹波市と丹波篠山市とがあります。
この丹波なのですが、現在は兵庫にある地域ではあるものの、現在の兵庫と京都とにまたがっている地域に存在していたため、今でもなお京都なの?と思われることが多い地域なのだそうです。
この丹波を代表するのが篠山城でありその城下町です。
当ブログでも何度も紹介していますが、今もな歴史の面影を強く残す地域ですね。
さらには食べ物もこの地域は有名であり、丹波の黒豆、丹波栗、鯖寿司など、ここでしか食べられないものが数多くあったりします。
また近年では、古い家屋などをリノベーションして若者が新たな街づくりに取り組んでいることもあり、おしゃれな田舎というイメージも強くなってきているのです。






淡路
最後が、淡路島にある淡路です。
明石海峡によって陸路でのアクセスが可能となったため、非常に利便性が高まりましたね。
全体的には山がちな島ではありますが。数多くの公園などが造られているため、兵庫の中でもリゾート地のような雰囲気を味わうことができるのです。
そんな淡路の有名な場所としてはやはり南北に存在する橋です。
明石海峡大橋と鳴門海峡、そして大鳴門橋と、大海にかかる橋から眺める光景は淡路ならではでしょう。
農産物として有名なのはたまねぎ。
淡路に行くといたるところでたまねぎを用いた食事に巡り合うことができます。


いかがだったでしょうか。
兵庫という一つの県でありながら5つの異なる顔を見せるヒョーゴスラビア。
このことを知ってから兵庫への旅に行ってみると、様々な楽しみ方のプランを練ることができるのではないでしょうか。
最近では、兵庫県公認でU5Hプロジェクト(ユナイテッド・五国・オブ・兵庫)なるものが経ちあげられるなど、ヒョーゴスラビアであることを逆手に取ったような地域おこしが行われていたりします。
これからもっと、このヒョーゴスラビアという言葉が一般的になってきて、兵庫の楽しみ方も広く知られることになるかもしれませんね。