今回はとある映画を紹介したいと思います。
この映画の舞台、そして主人公は日本人です。
しかし、この映画を製作したのは、ロシア・イタリア・フランス・スイス。
なぜ日本のことなのに、海外で製作されるのか。
それは、日本国内ではある種のタブーとされている内容であるからなのです。
その人物とは、天皇です。
天皇の中でも、歴代最長の在位期間だった昭和天皇を取り扱っているからなのです。
この映画は全編を通して、一人の人間昭和天皇の終戦前後の苦悩、そして日常生活がリアルに展開されます。
この映画で主演を演じたのは、イッセー尾形氏。
その演技のリアルさが話題となり、海外ではかなり話題となった映画なのです。
日本ではここまでのリアルを追求できなかった天皇像。
しかし、海外の国だからこそここまでリアルに映画化することができたのではないかと思います。
今回はこの2006年に日本で公開された映画、太陽について紹介していきたいと思います。
というわけで、今回のわきみちは、
映画に関する記事です。

















映画『太陽』

映画『太陽』は、2005年にロシア・イタリア・フランス・スイスによって作られた映画です。
日本で公開されたのはその翌年の2006年のことでした。
海外勢が製作しているということなので、どういった内容なのかと思うかもしれませんが、この映画は日本のとある人物を取りあげた映画なのです。
なぜ日本のことなのに、海外によって映画化されたのか。
それは、日本国内であれば取り扱いにくいテーマだからなのです。
日本国内にあって、日本人が取り扱いにくいテーマをもった人物。
その人物とは、天皇です。
天皇は天皇でも、この映画の主人公は、歴代最長の在位期間を誇る昭和天皇です。
私たちが知っている昭和天皇というと、戦前・戦中と現人神として存在した軍服姿の天皇の姿が一つ。
戦後に、日本各地を巡業して、慰問に訪れた穏やかな表情をした天皇の姿。
おそらくこのどちらかがイメージされるのではないかと思います。
しかし、そんな昭和天皇の終戦前後の苦悩や、普段のプライベートとなるとどうでしょうか?
ぱっとイメージはなかなかできないのではないかと思います。
しかし、いろいろと伝え聞いたことがある天皇像がつながった先にこの映画があるのです。
主演を演じているのはイッセー尾形氏。
一人芝居の第一人者ともいわれる同氏が演じる昭和天皇は、その姿が本物ではないかと錯覚させられるほどのクオリティを誇っているのです。
映画が始まるのは、第二次世界大戦の終戦直前のことです。
皇居地下の防空壕で生活をする昭和天皇。
ラジオから流れてくるのは、日本が直面している絶望的な戦局。
しかし、そのような中でも昭和天皇の日常は変わりません。
閣僚や首相たちとの会見。
海洋動物の研究。
決まった時間の食事。
ここだけみるといま日本が戦争の真っただ中にいるとは感じられません。
しかし、この場所にもアメリカ軍が襲ってくる可能性はゼロではないのです。
そんな淡々と過ぎていく日常をこなしていた中で、日本は敗戦を迎えます。
占領軍の司令部に迎え入れられ、連合国占領軍総司令官のマッカーサーと会談します。
その席で終戦についての思いを語る昭和天皇。
天皇の処分はまだ決まっていない。
現人神として称えられている天皇をないがしろにしてしまっては、その後の占領政策にも大きく影響してくる。
天皇の決断一つに日本の未来が委ねられているといっても過言ではなかったのです。
そんな天皇が決断したことは、国の未来のために自分の神格を返上するということ。
これがかの有名な人間宣言なのです。
しかし、天皇自身の人間宣言を録音した技師は自決をします。
物語の最後には、ただただラジオの音がかすかにきこえるのでした。
この映画では決して昭和天皇自身が感情を大きくあらわにするような場面はありません。
しかし、全編を通して昭和天皇の苦悩や決断、そして悲しみなどを感じ取ることができるのは、イッセー尾形氏のもはや憑依したかの如くの演技のたまものではないかと思います。

いかがだったでしょうか。
日本ではこのように一人の人物として天皇を取り扱うということはできないでしょう。
海外の客観的な目線だからこそこの映画は製作することができたのです。
日本での航海すら危ぶまれていたこの映画でしたが、驚くほどの人々が映画館へとやってきたのだそうです。
日本人誰もが知っている人物だけど、誰もが知らない人物。
一人の人間昭和天皇の等身大の姿をスクリーンを通して感じ取ることができる。
非常に貴重な映画の一つなのではないかと思います。